女性ホルモンを意識して、中から美しく
女性ホルモンが女性の肌や健康に大きく関係していることが最近知られるようになりました。ホルモンのしくみは一見複雑なようですが、みなさんが美容と健康のために知っておくべきととはわずかです。
2つの女性ホルモンの作用さえわかれば、自分の肌や体の変化がもっとわかりやすくなります。ホルモンを味方につけて、中から美しくなりましょう。
2つの女性ホルモン
エストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)を合わせて、女性ホルモンと呼んでいます。簡単にいうとエストロゲンは女性らしさを作る作用、プロゲステロンは妊娠を維持する作用をもちます。それぞれの働きを、もう少し詳しく見てみましょう。
エストロゲン(卵胞ホルモン)
特性
子供から大人に変わるとき、つまり思春期のときに女性らしい体を作る。
肌や髪への作用
肌のうるおいを治す。コラーゲンを増やして肌にハリを出す。肌を白くする。髪を豊かにする。
妊娠に備える作用
乳腺を発達させて胸を豊かにする。適度に脂肪のついた丸みのある体を作る。卵胞を成熟させ、子宮内膜を厚くする。
そのほかの作用
・精神の安定を保つ…脳血流をよくし、気持ちにハリを出したり記憶力を高める(更年期にさしかかってエストロゲンが低下すると、イライラやうつ症状、記憶力が低下するなどの症状が現れる)。
・健康を保つ・・骨量を維持する。抗酸化力が非常に強く、あらゆる病気から体を守る。
プロゲステロン(黄体ホルモン)
特性
妊娠したときに威力を発揮し、妊娠を維持する。ただし、生理前のイライラや不調は、このプロゲステロンの仕業。
肌や髪への作用
皮脂分泌を増す。メラニン生産を活性化する。
妊娠に備える作用
体内に水分をためる(むくみの原因になる)。体温を高める。
そのほかの作用
・胃腿の機能を低下させる…便秘や胃のむかつきの原因に。
美容のためには、エストロゲンが重要ということがわかります。
2つの女性ホルモンは、生理周期で増えたり減ったりしています。
●低温相(生理期間の後半から、排卵まで)…エストロゲンが高い。
●高温相(生理前2週間)…プロゲステロンが高いい。
そのため、生理前(高温相)は肌の調子が悪く、生理がくると低温相に入って調子がよくなる人が多いのです。
月の波を、うまく乗り切ろう
このような月の変化が、女性の体にとってストレスになっているのは事実です。しかし、これは女性の宿命で、女性に生まれたからにはそれに耐えられるように、体ができているはずです。
ただ、生理前に体や肌の調子が非常に悪くなり、イライラや落ち込みが激しくなる人もいます。症状が著しい場合は、月経前緊張症候群(PMS)と呼ばれます。それらの症状も、学生のときからというよりは社会人になってから悪化してきている人が多いようです。
つまり、不規則な生活や運動不足、ストレスなども影響しているのです。少しでも月の波を上手に乗り切るために、普段から生活を整えるようにしましょう。
生理前に見られる症状
肌
ニキビが出やすくなる、肌の免疫が低下して傷が化膿しやすくなる(おできができたり、ムダ毛処理で毛を抜いたところが膿んでしまうなどてシミが濃くなる、くまができる、ヘルペス・口内炎・ものもらいができるなど。
体調
熱っぽくてだるくなる、頭痛・肩こりがひどくなる、胸やお腹が張る、立ちくらみがする、便秘もしくは下痢になる、胃のむかつきもしくは食欲増進、扁桃腺が腫れやすくなるなど。
精神面
イライラ、落ち込み、泣きたくなるなど。
生理を乗り越えるための生活見直しポイント
早寝早起きをする
ホルモンはすべて(女性ホルモンに限らず)、体内時計の影響を受けています。生活の不規則はホルモンバランスを乱すので、まずは早寝早起きを励行しましょう。
冷えに注意
いわずと知れた、冷えは女性の敵。冷えは卵巣血流を低下させ、女性ホルモン分泌を妨げます。腰まわりや足首など、婦人科のツボをとくに冷やさないように気をつけて。ローライズの(股上の浅い)ジーンズなどをはいて、かがむと腰が見えるような女性が目立ちます。
どうしてもローライズのパンツ類をはきたい場合は、長めのインナー (タンクトップなど)を着て、すそをパンツの中に入れましょう。
ツボ押しとお灸
婦人科のツボを、ツボ押し棒(または手)などで押してみましょう。ツボにお灸をしてみるのもよい方法です。お灸は薬局で売られているものを使うか、鍛灸院に通ってしてもらうのもよいでしょう。
アロマテラピー
ホルモンバランスを整えるクラリセージや二アウリ、血行促進作用のあるサイプレスやレモンがおすすめ。アロマバスやオイルマッサージで利用してみましょう。
ピクノジェノール
西洋松の樹皮エキスで、フランスでは古くから民間療法として婦人科トラブルに使われてきました。血液をサラサラにする作用や抗酸化作用にすぐれ、月経前緊張症候群(PMS)、生理痛、生理不順、更年期症状の緩和などに有効といわれます。
サプリメン卜として売られています。
生理周期とスキンケア、生活管理
生理周期による肌の変化を知り、それに合わせたお手入れをしましょう。
生理前(高温相)
この時期の肌の特徴は三つ。
皮脂が増える
石けんでさっぱりと洗い、油分の少ない美容液で保湿しましょう。
敏感に傾く
美白やシワ用美容液などは刺激になるとともあります。ピリピリ感などを感じたら、この時期は使用を控えましょう。マッサージや美顔器を使ったお手入れや、除毛なども肌の負担になることがあります。肌が弱い人は、この時期を避けてこれらのお手入れを行いましょう。
紫外線に弱くなる
いつもよりも紫外線対策を入念に。パウダーファンデーションでしっかりガードして出掛け、くずれできたらフェイスパウダー(おしろい)を塗り重ねます 。
また、生理前は免疫が低下する時期なので、疲れをためないように早く寝る、便秘に気をつける(生理前に便秘をすると二キビや月経前緊張症候群が悪化することがあります)なども大切です。腰まわりや婦人科のツボを温めるようにしましょう。
生理後(低温相)
肌が安定した時期ですので、スペシャルケアを積極的に行いましょう。ホームピーリング、ビタミンCイオン導入、超音波マッサージなどがとくにおすすめです。
この時期から「早寝早起きと運動を心がける」「温かいものを飲む」「婦人科のツボを冷やさない」などを意識しておくと、生理前の症状がひどくならずにすみます。
婦人科のツボ
有名な婦人科のツポが、血海と三陰交。
血海は、脚の内側の、膝のお皿から指3本分上がったのところにあります。
三陰交は、足の内くるぶしから指4本分上がったところにある骨の少し後ろにあります。
婦人科系の症状が気になるときは、温めたり、押したりしてみましょう。
更年期と肌
閉経の平均年齢は50歳、一般的にその前後10年聞を更年期といいます。
肌はエストロゲンで守られていますから、それが減少する更年期には、急激にシミやシワが目立つようになります。シミやシワ、たるみなどの悩み解消ページを参照して、早めにアンチエイジングケアを始めてください。エストロゲンが減ると紫外線にも弱くなるので、パウダーファンデーションでしっかり日焼けを防ぎましょう。
また、更年期には肌が敏感になることがあります。今まで使っていた化粧品が合わなくなる、下着が触れた部分がかゆくなるなどの症状を訴える人がいます。更年期には精神的にも不安定になるため、皮膚のささいな変化でもとても気になってしまう人がいて、「更年期皮膚不定愁訴」などと最近では呼ばれています。
更年期は女性にとって、大きなターニングポイントであることは確かです。
自分の肌や体の変化に対して、決して否定的な気持ちにならず、正しい知識をもってひとつずつ柔軟に対処していきましょう。睡眠や食事、運動などに気をくばり、平素の健康状態を高めておくことも重要です。
アロマテラピーやツボ押しも取り入れてみましょう。大豆イソフラボンを摂ることや、漢方治療、プラセンタ注射を受けるととも、更年期症状の緩和に役立つことがあります。信頼できる皮膚科や産婦人科を探して、心配なととはすぐ相談できるようにしておくことも大切です。
妊娠と肌
妊娠中の肌の変化は人によってさまざまです。ふだんより肌の調子が悪くなる人、逆によくなる人、あまり変わらない人もいます。
妊娠中のときに見られる肌変化やその対策は、以下のとおりです。
肌が敏感に傾く
ふだん使っていた化粧品でも刺激を感じるととが。お手入れはなるべくシンプルにする、敏感肌用化粧品に切り替えるなどが必要です。
オイリーになってニキビが出る
脂性肌のお手入れを参考にして、スキンケアを変えましょう。
ビタミンC誘導体配合の化粧水を使うのもよいでしょう。
紫外線に対して弱くなる
妊娠中はプロゲステロンの影響で、メラニン色素ができやすくなっています。ファンデーヨンだけは塗る習慣をつけましょう。
妊娠性肝斑
妊娠中に肝斑ができることがあります。出産後に自然に薄くなることが多いですが、日焼けをすると沈着してしまうこともあります。
蕁麻疹や湿疹が出やすくなる
妊娠中はかゆみを感じやすく、汗で蒸れてかゆくなる、下着ですれる部分がかゆくなる、乳輪や陰部がかゆくなるなどのトラブルが多発します。石けんやシャンプーを敏感肌用にしてあまり洗いすぎない、入浴後に保湿する、下着は通気性がよく締めつけないものを選ぶことなどが必要です。
とくに、皮膚が伸びて引っ張られる胸やお腹は乾燥してかゆみが出やすいので、保湿クリームや乳液を毎日塗りましょう。それでもかいてしまうような場合は、皮膚科を受診しましょう。
妊娠性痒疹
痒疹(ようしん)とは、激烈なかゆみを伴うイボ状の湿疹で、虫刺されやア卜ピー性皮膚炎などをかき壊した部分に発生するととがあります。これが妊娠中に発生することがあり(妊婦の約200人に1人)、妊娠性痒疹といいます。痒疹が疑われる場合は、皮膚科を受診しましょう。
乳輪や陰部が黒くなる
ホルモンの影響でメラノサイ卜が活性化し、自然に黒っぽくなることがあります。出産後は多少戻ることもあります。一度黒くなったものを美白化粧品などで薄くすることはきわめて難しいのですが、恥ずかしいととではないので、あまり気にしないことです。
妊娠線
妊娠中に急に皮膚が引っ張られて伸びるために、その伸びに皮膚がついていかれず、表皮に亀裂を生じたものです。成長期にできる成長線と同じもので、肉割れとも呼ばれます。
お腹のほか、胸にもできるととがあります。急に体重が増えた場合に妊娠線は発生しやすいのですが、体質的なものもあるといわれます。妊娠線予防クリームなどが売られており、また産後に妊娠線を消す治療なども美容系クリニックで行われていますが、その効果は一定しません。表皮が裂けている状態ですから一種の傷痕であり、そこを完全に復元することはある意味でシミやシワを消すことよりもずっと困難です。
妊娠線を恐れる女性は多いですが、赤ちゃんをさずかる代償としては小さなものですから、母の勲章と思ってあまり気にしすぎないようにしましょう。
そのシミは本当に「妊娠が原因のシミ」なのか?
妊娠するとシミができやすいということが知られるようになり、「お産したからこのシミができたんです」という人が多くなリました。ところが、そういう人の多くが妊娠性肝斑でなく、老人性色素斑を指してそういっています。
出産をきっかけに仕事をやめ、メイクすることが少なくなり、さらに洗濯や買い物、子供との散歩などで紫外線を受ける機会が増えることがシミの最大の原因です。特別なお手入れをする必要はないのです。洗顔後に保湿美容液とファンデーションをつけるだけで十分シミ予防になります。
子育て中も日焼け止めだけは塗っていたという人も多いですが、ファンデーションをつけないと十分とはいえません。