毛とはどういうもの? 毛の構造や特徴を解説
毛は毛根血管より栄養をもらい、生まれる
ご存知のように、毛は毛根部分で誕生します。
細かくいうと、毛の根もとの毛乳頭と言われるポイントが、毛を作り出す工場になります。毛乳頭を取り囲む一層の細胞が、毛母細胞、言ってみれば毛の母です。この場所で毛は出来上がり、上へ押し上げられていきます。
毛母細胞の間にメラノサイトも存在し、メラニン色素を生み出すため、毛は黒いというわけです。メラノサイトの働きがなにかしらの原因で休止すると白髪になります。毛自体は生きた組織ではなく、毛乳頭部分だけが生きています。この部分には数多くの血管があって栄養分を送り込んでいるのですが、血流不良などによって栄養が十分にいかなくなると、毛はやせて細くなります。
毛抜きなどを利用して毛を抜いてしまうと、毛乳頭ポイントで引きちぎられることになってしまいます。毛乳頭は残っているので、どれほど抜いたとしても毛は生えてくることになります。毛乳頭には血管や神経を持っていてますから、抜くときはその場所でちぎれて、わずかな量ながら出血し、痛みも伴います。要するに、毛穴の中にある見えない部分なのですが、毛を抜くことは、皮膚をちぎって損傷させていることになるのです。抜いた毛に白っぽいものがついてきますが、この部分は毛穴の壁の一部分がちぎれてついてきたものなのです。永久脱毛の場合は、毛乳頭を電気などの熱で破壊します。
健やかな毛は10~12%の水分を内包します。(皮膚の角質層の水分は20%ほどですので、毛のほうが水分含有量は低いことになります)。
毛の断面と太さ
毛の断面は、内側より毛髄(メデュラ)、毛皮質(コルテックス)、毛上皮(キューティクル)という3層構造となっています。頭髪の太さは約0.05~0.15mmくらいです。
子供から大人へ成長するにつれて毛は太くなってくるのですが、25~30歳を経過すると、反対に細くなります。30~40代になってくれば髪が薄くなって今までよりも地肌が見えるようになったと感じる人が多いのはそういった理由からです。さらに、更年期ごろから壮年性脱毛のせいでボリュームが減ってしまうケースがあります。
毛は、その硬さで硬毛と軟毛に分類されます。
硬毛
頭髪、ひげ、眉毛、まつげなどの黒くて硬い毛。
軟毛
一般に産毛と言われている、細くてやわらかい毛。毛髄質を持っておらず、メラニンもわずかしかないというのが特徴です。赤ん坊の毛は100%軟毛です。
軟毛の一部は、思春期に硬毛に変化します。思春期に男性ホルモンの影響で腋毛や陰部の毛が濃くなってきますが、このように性ホルモンの影響を受ける毛のことを性毛と呼んでいます(陰毛、ワキ毛、手足の濃い毛、男性の胸毛、ひげなど)。
それ以外の毛を無性毛といいます。
産毛
細い毛を一般に産毛と言っていますが、正確に言えば胎児に生える毛のことを指します。お腹の中では赤ちゃんは産毛に覆われていますが、産まれるころになるとこれは脱落し、軟毛に生えかわっているのです。
毛の役割
手のひら、足の裏、唇、陰部(粘膜部分)を除いた身体全体に、毛が分布しています。
主なものの役割は、以下の通りです。
髪の毛
太陽光や、ぶつかったときなどのような外部の刺激などから頭部を守っています。また、頭は血管がたくさんあり皮膚からの放熱が多いところなので、体温を逃がしすぎないように髪の毛が守っているとも考えられております。
まつ毛
ゴミやホコりが目に侵入しないためのフィルターの役割を受け持ちます。
ワキ毛、陰毛
皮膚がすれるゾーンですので、これらの毛が摩擦を軽減するように機能します。
また、毛根部にはメルケル細胞という鋭い触覚をもつ細胞があり、毛に何かが触ったときにその感覚を敏感に伝達しているのです。言ってみれば、身体全体の体毛は、センサーの役目も兼ね備えているのです。
ヘアサイクル(毛周期)
毛の成長サイクルには3つのステージがある
全身の毛は、成長しては抜け落ちるという事を繰り返し、常に生え変わっています。植物が芽生え、成長、枯れていく場合とそっくりです。こういった毛の成長サイクルを、ヘアサイクル(毛周期)と呼びます。
ヘアサイクルは、次にあげる3つのステージで構成されています。
成長期
毛乳頭から毛が生え始め、成長していきます。この成長期の期聞は、それぞれの部分の毛によって違いがあります。腕や脚などの毛であれば3~6か月程度、髪の毛では3~5年程度です。成長期が終わったら毛は伸びなくなり、抜け落ちていきます。一定レベルの長さまでしか伸びないのは、成長期に限度があることが理由です。髪の毛は成長期が長いので、その他の体毛のと比べて長い期間伸びますが、どれだけ伸ばしても男性では腰のあたりまで、女性だとしても足のあたりまでしか伸びません(女性ホルモンは成長期を保持する作用があることから、女性のほうが成長期が長いのです)。
退行期
成長期を終了した毛は、毛乳頭での細胞分裂がストップし、伸びなくなります。毛の下側のほうが退縮し、毛は上に移動していきます。
休止期
その後、毛は休止期と言われる休眠に入ります。この時期の毛根は、棍棒状になります(棍毛と呼ばれます)。休止期を終えると新たに毛乳頭が形成され、毛が奥から伸び始めます。これに押されて古い毛は抜け落ちます。
休止期を迎えて自ずと脱落する毛は、根元がどれもこん棒状となります。病的な抜け毛のケースでは、成長期の髪が抜け落ちますので、根元が棍棒状でなく太い毛根がついています。抜け毛が気掛かりな方は、抜けた髪の根元を見てください。こん棒状なのは一般的にどの人も生じる抜け毛で、太くふくらんでいるものが大量に混入しているようなら、病的な脱毛の可能性があります。
毛の色の違い、くせ毛の原因
毛根の毛乳頭部にメラノサイトがあってメラニン色素を作っているわけですが、メラニン色素にも種類があります。ユウメラニンが多いのなら黒い毛になり、フェオメラニンが多かったら茶色っぽい毛になります。メラニン色素の種類や量は遺伝的に決まっているので、髪の色は生まれながらにして変わることがないのです。
また、毛の断面が円形だと髪はストレートで、楕円形や卵型だとくせ毛になります。東洋人は直毛が多く、白人はウェーブ、黒人では縮れ毛が多いのは毛の形が要因となっています。
メラニン色素の種類
メラノサイトで生み出されるメラニン色素にはユウメラニンとフェオメラニンが存在します。黒い色素はユウメラニンで、フェオメラニンは黄色や赤い色素です。こういったものが組み合わされて多様な肌や髪の色が作り出されています。言ってみれば、欧米諸国の人にはフェオメラニンパーセンテージが多いと言えます。ユウメラニンとフェオメラニンのブレンドされたものを一般に「メラニン色素」と呼んでいる訳です。
毛髪の性質を理解して適正なケアを
水に濡れると傷つきやすいキューティクル
肌の性質はある程度理解していても、毛の性質を理解していない人が多いと思われます。毛を傷めず美しく保つことを望むなら、毛の性質を理解することが大切となります。
まず、誰しもがよく知っているのがキューティクル(毛上皮)。キューティクルは毛の表面にウロコ状に並ぶ角化した細胞層で、毛の内部を守っています。逆向きにブラッシングしたり、毛をこすり合わせるというような刺激は、キューティクルを剥ぎ取ることになってしまいます。キューティクルが剥がれると、内側から水分が無くなって、毛はパサついて切れやすくなってしまいます。
毛は、水につけると毛の重さの30%くらいの水分を吸って、太さは15%程度膨らみます。毛皮質には空孔と言われている極小の孔が空いていて、この部分が水を吸いこむのが理由です。パーマ液などのアルカリで処理すると、ますます水を吸い込むようになります。水分を吸った髪はふやけてキューティクルが浮き上がり、剥がれやすくなった状態になります。なので、濡れた状態で髪をゴシゴシするのは厳禁なんです。
毛の傷みと伸び率
健康な髪の毛をl本手にもって、切れるギリギリまで引き伸ばしてみると、長さが40~50%ほど伸びます。言ってみれば、長さが1.5倍くらいになるまで切れないということで、これを伸び率といいます。濡れた状態では60~70%くらい伸び、さらにパーマ液で処理すると100%くらい伸びます。
毛皮質には硬ケラチンという線維状のタンパク質が縦方向に絡み合って走っていて、毛の弾力性をキープしているのですが、水で濡れるとタンパク質内の水素結合が切断され、また、パーマ液ではシスチン結合が切断されるため、引っ張った際にズルズルと伸びるワケです。キューティクルが傷んだ時にもタンパク質の架橋形成が切断されてしまうせいで、伸び率は高まります。伸び率が高いということは、毛の弾性が失われており、毛が傷んでいるということを意味します。
毛はアルカリと熱に弱い
毛は、酸には割と強いのですが、アルカリに触れると不安定になり、pH12で溶け始めます。アルカリ性の温泉に出かける場合は、温泉の湯が髪にかからないように意識しましょう。
また、毛は熱にも弱く、80~100℃程度から傷み始めます。水に濡れた状態ではさらに熱に不安定で、50℃くらいからケラチンが変性して傷みが発生します。
そのため、髪が濡れたまま強いドライヤーを当ててはいけません。できるだけタオルドライをしてからにしましょう。
へアドライヤーの熱は90℃前後にもなり、ヘアアイロンでは200℃くらいになりますので、頻繁に利用すると髪がとても痛みます。